シネマッド2019年5月号
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 新元号『令和』が1日、スタートした。公表から一カ月、列島に明るさと活気を醸し、国民に広く浸透しつつある。世論調査の好感度も73・7%。その要因はどこに―。 先ずは、改元が天皇の「生前譲位」にあったことが大きい。明治以来、天皇崩御(逝去)による「悲しみの中の改元」だった。が、今回は天皇退位による皇太子への継承。めでたく祝意を込めた、国民的儀式の雰囲気が強いことである。 そして、新元号の出典。日本の自然と心情を表した「万葉集」の《初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす》から『令』と『和』の二字が選ばれた。大宰府長官だった大伴旅人が梅見の歌会で披露したとされる一節。『令』には「めでたい」や「喜ばしい」、『和』には「おだやか」や「なごむ」などの意がある。  そう、『大化』以来、中国古典を出典とした元号が初めてわが国の歌集から選ばれたことも、新鮮さと親しみやすさを後押ししている。 加えて、平成の天皇(上皇)が、民間から迎えた美智子皇后(上皇后)と手を携え、民主憲法のもと「象徴天皇」のあり方を身を挺し確立したことが、底流にある。あの「昭和の戦争と原爆の犠牲者」への慰霊の旅や災害被害者への気遣いと励まし。「平和と安寧」を祈念し続ける真摯な姿が国民の信頼を深めてきた。 確かに、新元号『令和』には、戦後平和の『昭和』と不戦の『平成』を繋ぐ「平和な国づくり」へのイメージがある。国民への浸透が予想外に速い所以とみられる。 なお『令月風和』は、引用された旅人の「梅見の歌」から紡いだ造語である。その心は、「一人ひとりが幸せの花を咲かせる平和な世に」との願いにある。『令和』の趣意を伝える熟語として、やがて認知される日が来るだろう。 さて、改元に伴い小欄の覆面ネームも改め、「令和の世相」を斬りたく存じ候。歴史の証人として…。その百六十七十れいげつふうわ平和で幸せな世を願う令月風和かもほうぎょやわらよひらはいごたびとたずさていつなゆえんつむそうろう

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