シネマッド2019年5月号
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12 3月26日、ショーケンが逝った。テレビはどこも『太陽にほえろ!』のマカロニ刑事とか、萩原健一が水谷豊と競演した異色探偵ドラマ『傷だらけの天使』の映像を流し追悼した。それらの個性と演技力の源になったとも言えるのが斎藤耕一監督の秀作『約束』だ。 斎藤監督は1971年の『めまい』に起用した萩原を、翌年の『約束』で大女優・岸恵子と共演させ、異色のロードムービーに仕上げた。話はシンプルだ。日本海を北上する列車に乗ってきたチンピラ(萩原)が向かいの席の女(岸)に魅かれて声をかけるが、女は無口だった。隣には眼光鋭い婦人(南美江)̶。駅弁を一緒に食べようと手渡すと女は初めて口を開いたが、多くを語らない。やがて目的地に着いた2人を追って若者も降りた…。 女の名は松宮螢子。夫を殺して服役中だが、模範囚のため許可を得て母親の墓参りに来た。同行の婦人は看守。男は中原朗。仲間と強盗事件を起こして逃走中で、刑事(三国連太郎)に追われている。束の間の“やすらぎ”に身を委ねようとする2人…。 斎藤監督は台詞を最小限にしてオールロケの映像で綴る。撮影は坂本典隆で、望遠レンズを巧みに使い詩情あふれる画面で観る者を酔わせる。ヨーロッパ映画ふう、ルルーシュ作品を思わせる。 これに続き斎藤・坂本コンビは『旅の重さ』『津軽じょんがら節』と秀作を連発した。そして萩原は市川崑『股旅』、篠田正浩『化石の森』、神代辰巳『青春の蹉跌』、野村芳太郎『八つ墓村』、黒沢明『影武者』、蜷川幸雄『魔性の夏』、伊藤俊也『誘拐報道』、中島貞夫『瀬降り物語』、深作欣二『226』、山下耕作『夜汽車』、小品だが渡辺孝好『居酒屋ゆうれい』…と、名匠たちに起用され続けた。File No.17『約束』LE RENDEZ-VOUS〔1972年=斎藤プロ・松竹/88分◆斎藤耕一監督/岸恵子・萩原健一〕
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