シネマッド2019年6月号
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12 近年、世界の映画人は企画力・創造力不足を補うためか、過去の栄光にすがって強引な続編や翻案再映画化に走っている。直近では感涙作『いま、会いにゆきます』が韓国でリメイク。これは観てないので評価は控えるが、やはり日本のオリジナルをお薦めしたい。 市川拓司の原作を、岡田恵和が見事に脚色。これをTBSドラマ『オレンジデイズ』『GOOD LUCK!!』『ビューティフルライフ』といった秀作を手掛けた広島市中区出身の土井裕泰が映画初監督。 6歳の息子・佑司(武井証)と夫の巧(中村獅童)を残して一年前に他界した澪(竹内結子)が、愛息に描き遺した絵本の“予言”どおり、梅雨入りと共に蘇る。が、過去の記憶は全くない。佑司は大喜び、巧は戸惑いながらも思い出を語り聞かせて“二度目の恋”におちる。しかし澪は梅雨明けと同時に再び別れを告げる…という甘く切ないファンタジーの傑作。不覚にも試写会でぼろぼろと泣いてしまった。 水溜まりに雨粒が滴って広がる波紋…美しい映像に、周りの人々の優しさも加わり、夫婦と母子の愛情が溢れて涙雨になる。ことに終盤で澪が遺した日記から空白が一瞬にして埋まり、題名の意味も判明!(脳科学的にも理にかなった感動を誘う手法)、これぞ命がけで人を愛すること、時を超えて想い続ける「真の愛」を教えてくれる。ポケットでの手繋ぎに胸キュンとなった人も多いはず。 唯一の欠点は、演出が良すぎたためか現場の雰囲気も上々だったようで、我が憧れの結子ちゃんを獅童が弄び、“できちゃった婚”に至ったこと。一時期は感動も半減したが、案の定3年後に離婚したので評価は復活。今も観るたびに涙腺が決壊する梅雨期の定番だ。File No.18『いま、会いにゆきます』 〔2004年=TBS・東宝ほか/119分◆土井裕泰監督・竹内結子主演〕土井裕泰監督に直筆サインをもらったDVDジャケットよしかずのぶひろみおあかししたた

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