シネマッド2019年6月号
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三ながらも、彼の変わらぬ愛にふれ、涙を浮かべて「はい」と返事する。 2011年、春。結婚を意識していた道彦との愛に破れて意気消沈の芙美が実家で弱音を吐くと、昇平は意味不明の言葉を口にするが、そこには親の愛と優しさが溢れていた。 ある日、昇平がまた徘徊して姿を消した。持たせておいたGPS携帯で行く先を辿ると、昇平は遊園地で見知らぬ子供とメリーゴーランドに乗っていた。傍らには、青い花柄と赤と黄色の傘があった…。 そして2013年の秋から冬に、曜子は網膜剥離を患い、昇平は骨折と相次いで入院することに。芙美は仕事を辞めて看病にあたる。やがて昇平の容態が急変、麻里も緊急帰国する。一家は医師から人工呼吸器をつけるかどうか決断を迫られて動揺するが、そこへ反抗期だった崇から「生きてる限り、生きてて欲しい」というメールが届く…。出世作が素晴らしかった分、第二作への期待が膨らむ中で見事に家族愛を描き切ってみせた。三本の傘の意味が分かった時、観る者の胸に熱いものが…。超高齢化でどこの家庭にも起こりうる困難に、この〝愛〞が支えとなるか。 〔良〕○C2019『長いお別れ』製作委員会 ○C中島京子/文藝春秋

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