シネマッド2019年6月号
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五・トラー(ホーク)は礼拝に来た妊婦メアリー(セイフライド)から相談を受ける。環境活動家の夫が「温暖化で生活環境が悪化する世界に子供を産み落とすのは間違いだ」と出産に反対しているというのだ。トラーは戸惑いながらも〝命〞を説く。 折しも教会の上部組織に大口寄付しているバルク社が環境汚染の原因企業トップ百社の第4位だと知り、トラーは心を乱す。メアリーの夫が自殺し、遺品の中に自爆用ベストを見つけたトラーは、病魔に冒された自身の体に着けて、バルク社が後援する教会の設立二百五十周年の式典に臨む…。モノクロ調の画面はスタンダードサイズで意識を人物の表情に集中させる。重苦しい半面、苦悩の中の純粋な思いを感じさせて見事な衝撃作だ。  〔良〕………………………………………………………………………天国でまた会おう〔監督・脚本=アルベール・デュポンテル/原作・脚本=ピエール・ルメートル/出演=ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート、アルベール・デュポンテル、ロラン・ラフィット、ニエル・アレストリュプ、エロイーズ・バルステール/’17 年度=仏作品/1時間57分〕 1918年11月、第一次大戦終結直前の西部戦線で、独軍と対峙する仏軍のプラデル中尉(ラフィット)が停戦命令を無視して突撃を指示するが、その軍規違反を見抜いた中年兵アルベール(デュポンテル)は塹壕に突き落とされて生き埋めに。そこを若いエドゥアール(ビスカヤート)が救い出した直後に爆撃を受けてエドゥアールは顎を失う。 アルベールの看病もあり命は取り留めたが、エドゥアールは言葉を発することが出来なくなる。帰還した二人はエドゥアールを戦死したと偽装したうえで、彼の絵画の才能を認めようとしなかった厳格な父マルセル(アレストリュプ)と憎きプラデルに復讐するため、〝才能〞を生かした計略を思い付く…。おどろおどろしい物語だが、エドゥアールが作り出す仮面などの美しくファンタジックな映像が優しく、さすがのフランス映画。二人を支える少女(バルステール)の存在が大きな救いだ。   〔良〕○C2017 Stadenn Prod. - Manchester Films - Gaumont - France 2 Cinéma○CFerrocyanide, Inc. 2017. All Rights Reserved.

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