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問題作『あいときぼうのまち』1週間限定公開で急きょ舞台挨拶

 福島を舞台に、昭和20年から現代まで“原子力”に翻弄された三世代の家族を描いた問題作あいときぼうのまち8月2日(土)からサロンシネマで1週間限定公開される。これに合わせて、同作品の脚本家・井上淳一と広島出身の俳優・沖正人が舞台挨拶する。あいときぼうのまち TS
☆昭和20年4月、福島県石川町の山奥で、国と軍部が秘かに研究開発している新型爆弾に使うウランを得るため、学徒動員された中学生・英雄(杉山裕右)は懸命にツルハシを振り下ろしていた…。
 昭和41年、成長した英雄(沖)は双葉町に住んでいたが、原子力発電所誘致に伴う土地の買い上げに最後まで反対して村八分状態になり、娘の愛子(大池容子)も新聞配達の職を追われる。彼女は唯一、同級生の恋人・健次に安らぎを求めるが、その健次は原発の標語募集に応募して《原子力 明るい未来のエネルギー》が入選、愛子とは離ればなれになる…。
 平成23年、東京電力を定年退職した健次(勝野洋)は、同じく原発で働いていた息子を癌で亡くすが、因果関係が証明されないからと労災裁判には踏み切れないでいた。そんな時、愛子(夏樹陽子)から連絡が入り、二人は密会する。それを知った愛子の孫娘・怜(千葉美紅)がとった行動は…。そして大震災—。心に大きな傷を負った怜は避難先の東京で自暴自棄の生活を送るうち、福島への支援募金を募る金髪の若者と知り合う…という物語。
 企画は福島出身の菅乃廣監督が大震災の年の暮れに決断、取材を重ねて石川町のウラン採掘を知った井上は3つの時代を組み合わせることで「いつの時代も国や大企業の論理に翻弄され、過ちと犠牲の歴史を繰り返してきた人間の哀しさを描きたかった」という。さらに「被爆のことも、大震災と原発事故のことも、時が過ぎるとだんだん忘れられ、それをいいことに国や大企業は再び思いどおりの道を進もうとする…その怖さを今だからこそ声を大にしたかった」と力を込める。江田島出身の沖も、「被爆と原発事故は別ものではあっても“核”の恐ろしさは同じ。広島出身者としてそれを心に留めて演じました。いま、故郷の友人たちが地道に応援活動に奔走してくれていて嬉しい」と話す。あいときぼうの…72
 この作品、東京電力と実名を出しているため各マスコミは広告主に遠慮してか、全く取り上げてくれない。「ニュース報道では実名を出しているのに、フィクションの作品では何故、出してはいけないのか?。マスコミの役割とは何なのか…」と井上はタメ息をつきながらも、「広島で“8・6”の週に公開できたことは作品としては幸せです。今回の上映を導入部として草の根で周知活動を広げ、いずれアンコール上映、特集上映などで多くの方に見ていただけるようにしたい」と意気込む。
 舞台挨拶は8月2日(土)と3日(日)の16時50分からの上映前。上映後にもロビーなどで対話したいという。問い合わせは℡082・241−1781。
※チラシを手にした井上淳一(左)と沖正人(右)