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幻の力作「ナンバーテン・ブルース」緊急公開

 ベトナム戦争の末期にサイゴンなどでオールロケしたものの、さまざまな事情で“お蔵入り”になっていた映画ナンバーテン・ブルースさらばサイゴン監督・脚本=長田紀生)が奇跡的に陽の目を見て封切られ、広島でも急きょ8月16日(土)〜22日(金)までの1週間、特別上映されている。初日には長田監督が舞台挨拶に立った(写真右)No.10長田監督39
 この作品は1975年(昭和50年)1月から4月初めにかけてサイゴンや古都フエ、ダナンなど“南ベトナム”でロケされたが、戦火は日増しに迫り、撮影フィルムを抱えて最後の民間機に乗り込んで飛び立った1週間後にサイゴンが陥落した。作品は一度は完成したものの当時のプロデューサーと意見が対立するなどして未公開のまま月日が経った。そして2012年、国立フィルムセンターにネガフィルムや“0号”プリントが保管されていたことが分かり、デジタル処理して劣化を補正したうえで再編集。完成版は昨年、ロッテルダム国際映画祭や尾道・お蔵だし映画祭、広島平和映画祭などに出品され絶賛された。
 物語は、サイゴンに駐在する商社マン杉本(川津祐介)が些細なトラブルから元現地雇用のベトナム人を殺したことから逃亡を決意、恋人のラン(タンラン)や日本人とベトナム人とのハーフの青年タロー(磯村健治)と共に南ベトナム北端の街フエを目指す…。というサスペンス痛快作。随所に兵士や軍用車両も映し出され、砲声も聞こえるなど、ある意味で戦争末期のドキュメンタリー映画でもある。当時「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と自惚れ、その裏で「エコノミック・アニマル」と罵られた日本人の姿が投影されているが、長田監督は「エンターテイメントとして楽しんでもらい、そこから何かを感じていただければ」と、にっこり。
 上映はタカノ橋「サロンシネマ」で、連日16時35分からの1回(99分)。℡082・241ー1781。