四………………………………………………………………………茜色に焼かれる〔監督・脚本・編集=石井裕也/出演=尾野真千子、和田庵、片山友希、永瀬正敏、オダギリジョー、大塚ヒロタ/’21 年/2時間24分〕 田中良子(尾野)は七年前、ロックミュージシャンの夫・陽一(オダギリジョー)を事故で亡くした。自転車で横断歩道を渡っていた時、高齢で認知症の元官僚が運転する車にはねられたのだ。加害者から謝罪の言葉が今もないから―と良子は賠償金の受け取りを拒否している。 生活は苦しい。営んでいたカフェはコロナ禍で閉店を余儀なくされ、今はスーパー内の花屋で働いているが、当然それだけでは13歳の息子・純平(和田)との生活費はギリギリ。市営団地の家賃は安いが、脳梗塞で倒れた義父の老人ホーム入居費や、陽一が愛人に産ませた娘の養育費も支払っている。純平の疑問に良子は明るく「まあ、頑張りましょう」という口癖を繰り返すだけだった。 実は良子、夜は渋谷のピンサロで働いている。時給三千二百円。同僚のケイ(片山)とグチを言いながら、店では笑顔で男たちの相手をする。そんな時、良子は中学時代の同級生・熊木(大塚)と再会し心をときめかせるのだった。一方、学校で上級生のイジメに耐えていた純平は、ヒモに苦しめられているケイに同情し、ほのかな恋心を抱く…。………………………………………………………………………5月の花嫁学校〔監督・脚本=マルタン・プロボ/出演=ジュリエット・ビノシュ、ヨランド・モロー、ノエミ・ルボウスキー/’20 年=仏/1時間49分〕 1967年のこと、美しい街並みとブドウ畑で有名な仏アルザス地方にある家政学校に〝完璧な主婦〞を目指して十八人の少女が入学した。校長のポーレット(ビノシュ)は、夫の急死で学校が破産寸前だと知り、窮地を抜け出すための方策を求めて奔走することになる。 そんな時、パリで「5月革命」が勃発し、社会の変革を求める運動が全土に広がる。これに刺激されて、ポーレットたちは従来の概念を壊し新しい学校の在り方を模索する…。○C2021「茜色に焼かれる」フィルムパートナーズ
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