シネマッド2021年8月号
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二 昨年8月15日に全国放送されたNHK国際共同制作特集ドラマ『太陽の子』の映画版が8月6日(金)から公開される。ドラマも秀作だったが、その〝母体〞ともなる映画版は戦争秘話ものとしても青春映画としても近年稀に見る感動作。黒崎博監督はNHKのチーフディレクター。朝の連ドラ『ひよっこ』や大河『青天を衝け』など多くのドラマを手掛けてきた。広島局赴任中には呉を舞台にした『帽子』(平成20年/出演=緒形拳、田中裕子)で文化庁芸術祭優秀賞を受賞、続いて御手洗でロケした感動作『火の魚』(平成21年/出演=原田芳雄、尾野真千子)では芸術祭大賞やイタリア賞、モンテカルロ・テレビ祭最優秀賞などに輝いた。 当時、図書館の隅で「広島県史」を見つけ、その中に若い科学者の日記があった。それは京都帝国大学で最先端の原子物理学を学んでいた学生の研究記録や日常生活を綴ったもので、黒崎監督は戦時下の青春像を読み取ったと話す。しかも、大戦末期に日本も原爆開発に取り組んでいた事実も。それを基に膨大な資料集めと取材を重ねてシナリオ『神の火』を執筆し、「サンダンス・インスティチュートNHK賞」の特別賞を受賞した。 局内のプロデューサーはもちろんハリウッドの映画人たちも加わって映画化への話が進み、ついに完成。そのパイロット版ともいえるテレビドラマ版を昨年放送、絶賛された。特集さまざまな“炎”に重ねた科学と人間と青春の情熱黒崎博監督の感動作 映画『太陽の子』特集秀作ドラマ『帽子』『火の魚』の

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