シネマッド2021年9月号
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14 話題作『孤狼の血 LEVEL2』で“狂犬”を怪演している鈴木亮平が11年前に初主演した感動作。実は演技の師匠・塩屋俊監督が鈴木のために企画し、映画デビュー作になるはずだったが、一時頓挫したのち4年後に実現した作品。 舞台は神戸。貴島大翔(鈴木)は大学でジャズサークルに所属してトランペットを吹いている。彼は「COOL JAZZ QUINTETTE」という幻のバンドのLP盤を聴いて以来、秘かに憧れていた。 ある日、彼は父(陣内孝則)から亡くなったと聞かされていた祖父・健三郎(財津一郎)が実は健在だと告げられ、一緒に迎えに行く。そこは島のハンセン病療養所―。 半世紀ぶりに帰宅した健三郎に大翔はどう接していいか戸惑う。そこで聴かせた例のLP盤に、祖父は驚く。実は健三郎はあのバンドのトランぺッターだったのだ!。若き健三郎(青柳翔)は、ジャズに青春を燃やし恋もした。が自らの難病を知ってすぐ、仲間に何も告げず姿を消した…。 かつての仲間を探して会いたいと家出した健三郎を追って大翔も旅する羽目になる。祖父と孫が旅の末に見つけたものは…。 公開前のキャンペーンでサロンシネマに現れた鈴木は文字どおり好青年。気さくに裏話を語るうち舞台が神戸ということもあって、彼は“お国訛り”(兵庫・西宮出身)のイントネーションが増えてきたのが印象的だった。 震災から立ち直った街・神戸と病いと偏見から立ち直った祖父の姿を重ねながら若者の目線で家族の絆を描いた佳作だ。最後に演奏する「マイ・ブルー・ヘブン」に泣けた。「役を自分に近づけて、芝居じゃない芝居を心がけた」と語った鈴木青年だが、今や映画にドラマに大活躍。納得だ。File No.45『ふたたびSwing Me Again』〔2010年(平成22年)=ギャガ配給/111分◆塩屋俊監督・鈴木亮平主演〕ひろと

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