シネマッド2021年10月号
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12◆何度か特集でお伝えしてきた“広島吟醸酒誕生物語”『吟ずる者たち』が遂に完成しました。協賛やスポンサーなど関係者に向けてのシークレット上映会でひと足早く観せてもらい、泣きました。脚本を読み、密着取材した末に明治編の蔵人役で出演させていただき、要所は知っていたのに、終盤はずっと泣いていました。期待以上の感動作と太鼓判を押します。◆それはひとえに油谷誠至監督の真っすぐな演出と感性の賜物だと思います。劇場映画初監督の前作『飛べ!ダコタ』(本号の「これを観ずして」欄参照)もそうでしたが、史実をベースに人間のひたむきな姿と温かさ、絆、家族…を丁寧に、真っすぐ描いているのが特徴です。◆それを支えているのが本号の特集で紹介しているベテランのスタッフたち。現場を見ていて感じたことですが、当然ながら事前の打ち合わせをしていたと思いますが、それにしても監督の「次はこのカット」の一言で全スタッフがササッと動き回りセットを整えていくのです。◆準備を整えながらベテランの匠たちは細かく調整を重ねて、リハーサル中も後も例えば照明の角度や量、色合いにこだわり「もう少し…」を繰り返します。監督の頭にあるイメージを理解しているからこそ、監督さえも待たせて技術の全てを投入するといった雰囲気でした。◆そう、伝統工芸の職人さんや人間国宝の達人たちによく似たこだわりの仕事ぶり。そこには効率とか利益とかには関係なくひたすら「いいものを創る」という匠の魂があります。そして受け取る人に喜んでもらいたいという“想い”が感じられます。そうしたものを“銀幕”を通して受け取っていただければ、関係した者の一人としてこの上なく嬉しく思います。◆10月にはキャンペーンもあり公開初日には監督や出演者らの舞台挨拶も予定されています。なので、11月号にも特集記事を掲載します。お楽しみに。

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