六………………………………………………………………………吟ずる者たち〔監督=油谷誠至/脚本=仁瀬由深、安井国穂、油谷誠至/出演=比嘉愛未、中村俊介、戸田菜穂、渋谷天外、ひろみどり、大和田獏、丘みつ子、中村久美、川上麻衣子、山口良一、中西良太/’21 年/1時間55分〕 東京で仕事も恋も夢破れて故郷の安芸津に戻った永峰明日香(比嘉)を祖母の敏江(丘)も母・和子(中村久)も温かく迎える。酒蔵を経営する父の亮治(大和田)は蔵を継いでくれる様子のない明日香には目もくれず、この地で昔、軟水での日本酒造りに成功し〝吟醸酒の父〞と呼ばれる三浦仙三郎の魂を受け継いだ、現代ふうの吟醸酒を造ろうとしていた。 そんな時、亮治が倒れて入院し、蔵は存続が危ぶまれる状態に。病院へ着替えを届けようと父親の部屋に入った明日香は仙三郎が書き綴った酒造りの記録を見つける。そこには長年にわたる試行錯誤の足跡が…。 明治十三年、政府の酒造業解禁を受けて米肥料問屋「三浦屋」の長男・仙三郎(中村俊)は酒蔵を開いたが、腐造の連続に頭を抱える。その窮状に当主の忠兵衛(渋谷)は「仙の思うようにやりゃあええ」と支援を宣言。家の財産を注ぎ込むことに弟たちは反発、仙三郎はひたすら頭を下げて支援を乞う。やがて父親も、後押ししてくれた母マチ(ひろ)も逝った。仙三郎は妻ソノ(戸田)に支えられ、近郷の蔵元たちから酒造りの知見を教わりながら研究を重ねる。 百回試して千回改める―仙三郎は親しい酒造家・木村和平(山口)や、精米機を自作する佐竹利市(松尾潤)たちの協力を得て、徐々に軟水での醸造に近づいていく。その頃、ソノは子供を授からない寂しさから義弟の娘ミヨ(中村桃子)を養女にもらい大切に育てる。幼いため食は細いが○C2021ヴァンブック
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