シネマッド2021年12月
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 この一年、国民に定着した言葉は『不要不急』『コロナ禍』『三密』に『ステイホーム』『濃厚接触』『クラスター』だった。先に発表された文化庁の国語世論調査による。確かに新聞やテレビ、官公庁の広報誌などでも頻繁に使われてきた。「これほど多くの新しい言葉が日常生活に定着するのは稀な現象。やはり、命にかかわる用語であることが大きな要因だろう」と分析している。 そうかもしれない。だが見方を変えれば、これらは『ステイホーム』の他は日常生活に疲弊を招いた言葉だ。良いイメージはない。正直なところ「食傷気味」でもある。 ただ『不要不急』とは「する必要もなく、したとしても別に急ぐ必要もない用事を言う」と辞書にある。本来は「ゆったりした状況」を指す言葉なのだろう。 さて、師走を迎えた。恒例の「今年の漢字」は―。そう、国語世論調査などを考慮し『不要不急』の【不】を第一候補に挙げたい。コロナ禍続きで「あれもダメ、これもダメ」という、万事が我慢の日々だった。昨年もコロナ世相を反映した【密】を予測。勧進元の京都・清水寺の発表も同じで、ズバリ的中した。 二番手は【疎】だろう。非常事態宣言の連続で人流がストップ。盆正月帰省や村祭り、入学式や卒業式の中止など公私とも「疎遠」な生活が続いた。大学生はオンライン授業が大半で「友達が出来ない」という深刻な悩みを抱えたままだ。 「今年の漢字」の実施要項には〝希望をつなぐ一字〞をとの趣旨も含まれている。大きな自然災害が多発し【災】など〝負の漢字〞が選択される年が多いのは残念である。 そこで敢えて、前向きな漢字を挙げるなら【進】だろう。コロナワクチンの接種や治療法・特効薬の開発も進み、「コロナとの共生」への道も見えてきた。パンデミックの苦い経験を生かし、新たな生活スタイルを打ち出せないものか。そんな期待を込めた「一字」である。その百九十八十二ふようふきゅう﹁漢字一字﹂に託す思い不要不急ひんぱんまれひへいにが

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