シネマッド2022年2月
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 《鳩に三枝之礼あり、烏に反哺の孝あり》という中国の諺がある。 ハトは親鳥より三本下の枝に止まることで敬意を示し、親への礼儀を守る。カラスは成長したら親鳥に口移しで食べ物を供し、養育への恩返しをする。つまり「鳥でも親を敬い孝行の術を知っている」とする警句である。ただ、ハトやカラスが「孝養心」を意識しているかどうかは定かではない。鳥類学者らは「種の保存のための本能的な行動ではないか」とみている。 田舎のわが家の庭には、年中、野鳥たちが遊びにやって来る。ハトもカラスも常連だ。が、残念ながら諺のような行動は確認できていない。初冬の珍客はキジだ。頭部は鮮やかな朱色、胸は明緑色、羽は茶と灰色のまだら模様で、頭部から尾羽まで一㍍近くある雄姿。芝生の上をゆったりと散歩する。気づかれぬよう縁側のガラス越しに眺めていると、しばらく庭木のカボスの残り実をつついて飛び去った。貴公子のような気品のある見事さに感動! そう、キジ(雉)は「日本の国鳥」である。昔話『桃太郎』にも鬼退治の先導役として登場。日本国民には馴染みの深い鳥だ。地震の予知能力もある。発生前に「ケーン、ケーン」と鳴き騒ぐという。 こうしたキジの雄叫びは戒めの格言としても知られる。《雉も鳴かずば撃たれまい》―キジも草むらに隠れて黙していればハンターに撃たれることはない。転じて「無用の発言が災いを招く」との例えに。「余計な言動を慎め」という人間社会への忠告だ。 もうすぐ春を告げるウグイス(鶯)が姿を見せる。オオルリ、コマドリを加え「日本三鳴鳥」とされる。また鶯は別名「春鳥」とも呼ばれ、他にも「春告鳥」「花見鳥」「歌詠鳥」「報春鳥」「経読鳥」など多数。いずれも言いえて妙だ。その心境を、江戸の禅僧・良寛が詠んでいる。 《鶯の声を聞きつるあしたより 春の心になりにけるかも》その二百十さんしのれい野鳥に学ぶ自然の摂理三枝之礼カラスはんぽことわざうやますべな じおたけ

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