シネマッド2022年3月
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二代目「桜守」を生きるみずえ緑地株式会社代表取締役正本大さん●パーソナリティ玉田陽子〔オフィス・タマランズ代表〕 この日、宮島の紅葉谷川沿いでは正本さんが顧問を務められる『宮島さくら・もみじの会』の皆さんは桜の手入れの真っ最中。枯れ枝の撤去や根元への肥料やりなど樹勢回復に励んでいらっしゃいました。 世界文化遺産・日本三景『宮島』の魅力は、厳島神社とそれを取り巻く豊かな大自然です。島には紅葉が約1400本、桜は約1600本で、そのうち9割がソメイヨシノです。 約15年前、島内の方から正本さんの父上・良忠さんに、「弱っている桜を何とかしたい」と相談があったことが桜守の始まりです。その願いが今ではしっかりと根付き、真夏を除いて一年中、地道な作業をされています。会員は約100人。コロナ禍の2年余りは島内在住者約30人だけで活動されています。 「厳島神社」多宝塔近くにある桜が元気になったのも、この会のお陰だと言われています。 黒沢明監督『生きる』(1952年)は正本さんが幼少の頃から何度も観ている映画。余命宣告を受けた主人公が残された時間を必死に公園造りに生きる姿を描く名作です。正本さんは「限りある人生を前向きに生きているか?何もしないのか?―大人になってからは“どう生きるか”を常に考えさせられます」と、力を込めておっしゃいます。 お父さまから受け継がれた「桜守」のバトンは、岩国市の錦帯橋、安芸高田市の土師ダム、三次市の尾関山にも広がっています。桜の長い樹齢の中で、その一時代に自分が触れ、命のリレーを次へどう繋げるか―を考えながら、樹々を丁寧に見守っていらっしゃるのです。 コロナ禍と、自然災害にも怯える日々を私たち人間は生きています。だからこそ自然に対する畏敬の念を忘れないでいたい―と私は痛感しました。当たり前だと思っていた満開の桜も人々に守られ、愛されているからこそ美しく咲き誇ります。今年は、いつもより感謝を込めて、満開の桜を愛でたいと思います。〜その21〜11宮島の「紅葉谷公園」で正本大さん(右)とまさもと だいよしただ

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