シネマッド2022年4月
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 おや     十『親ガチャ』という若者言葉が流行っている。「ガチャ」とは、当たり外れのあるスマホゲームや玩具入りカプセルのくじ引きガチャのこと。それに擬えた造語である。どんな場合に使うのか―。多くは親の経済力や教育方針などに不満を抱いたとき「親ガチャに外れた」と自嘲してみせる。つまり「子どもは親を選べない。どんな親を持つかで人生が決まる」との嘆き節だ。ショッキングな若者心理ではある。こうした社会現象について、新聞の声欄やブログに見る巷の意見は大きく二つに分かれている。《否定・反発派》親に失礼だ。自分の努力不足を親のせいにする責任転嫁と自己否定でもある。先ずは生まれて来たことに感謝し、前向きな生き方を目指してほしい。《同調・理解派》生まれた環境が子どもの性格や人生に影響するのは間違いない。これは宿命。逆境を克服し、幸せな人生を築いた例もまた多い。逆に言えば、親も子どもを選べない。相互の理解と愛情、自己努力で乗り越えていきたい。こんな意見を受けて、社会学の専門家は「流行語はその時代の感性を軽い言葉で表現することで生み出される。親ガチャに外れたと言われたら、親子関係などについて話し合うチャンス。子育ての最終目標は〝子どもの自立〟にある。子どもが自分で考えて人生を歩めるようサポートしたい」と助言している。さらに、身分制度のあった封建時代ならいざ知らず、民主主義社会の令和の今、なぜこんな若者言葉が流行るのか―。それは「SNSなどの普及で簡単に他人の生活との比較ができるようになり、欲望だけが肥大化したためだ」とみる社会背景の分析にも注目すべきだろう。あの仏教国のブータンは「国民の幸福度が世界一」として知られる。GNP(国民総生産)よりもGNH(国民総幸福量)を重んじる国挙げての営み。その真髄は「足ることを知る」生活信条にあるという。じちょうなぞらちまたは やしんずい時代を映す﹁親子の絆﹂その二百二親ガチャ

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