《ディレクターズ・トーク》の後、控え室で『湯を沸かすほどの熱い愛』のパンフにいただいた中野量太監督のサイン〜その24/最終回〜9●パーソナリティ〔オフィス・タマランズ代表〕広島市映像文化ライブラリーでの講演会れた淀川さんは、優しい語り口と柔らかな笑顔で多くの方に愛されました。その日、淀川さんは広島駅近くのホテルのラウンジで打ち合わせ中でした。そこで私はすぐに色紙とマジックを買いに走り、初対面にもかかわらずサインをお願いしました。その時、淀川さんは上品で穏やかなあの声で「君は良い子だね」とおっしゃって、私の頭をそっと撫でてくださいました。一瞬の出来事でしたが今でも映画のワンシーンのように思い出されます。 コロナ禍の中、対面で話をする機会が少なくなり、心細い日々が続きます。しかし、これからも素敵な人にめぐり逢えるのを楽しみに頑張りましょう! それでは、かつての淀川長治さんの懐かしいあの名調子でお別れします。「では、またお会いしましょう!さよなら、さよなら、さよなら」玉田陽子出会いは人生の宝物中野量太監督と淀川長治さん 新型コロナウィルスに翻弄された2年余り、これまで私がお会いした尊敬するトップをご紹介しました。トップは、カリスマ性もありますが孤独で繊細です。半面、明るくワクワクすることが大好きで、その魅力が多くの人を惹きつけています。 最終回は、私が選んだ映画です。中野量太脚本・監督の『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)。血のつながらない親子を演じる主演の宮沢りえさんと娘役の杉咲花さんのたくましいやり取りが優しい作品です。中野監督には、広島市映像文化ライブラリーの《ディレクターズ・トーク》でインタビューをしました。監督の受け答えはとても真摯で好感を持ちました。まっすぐで飾らない人柄はまさにこの映画そのものです。特に幼い頃、広島市で暮らしていらっしゃったのが嬉しくて、親戚のような気持ちで今も応援し続けています。また、この映画の音楽を担当された渡邊崇さんも広島市のご出身です。 かつて私は、リスペクトする映画評論家の淀川長治さんを偶然にお見かけしたことがあります。映画解説で活躍され、1998年に89歳で旅立た
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