シネマッド2022年7月
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ロシアのウクライナ軍事侵攻で国際的に注目されたのが『人道回廊』というキーワード。戦闘地域で市民の生命を守るため一時停戦し《避難路を確保・保障する》とする人命尊重の究極の手段である。だが、ロシア軍の度重なる約束違反で一回だけしか成立せず、世界の人々の義憤が渦巻いた。そればかりか、ロシア軍はウクライナの民間アパートをはじめ学校や病院、劇場などをロケット弾で無差別攻撃。これまでに国際刑事裁判所が確認した市民虐殺などの戦争犯罪は一万件を超すという。狂気の沙汰だ。今回のロシア軍侵攻は「プーチンの戦争」と呼ばれる。終結の暁には〝戦犯〟として厳しく戦争責任を問われるだろう。いや、問わなければならない。湾岸戦争から半世紀。もう大きな戦争はない、と思っていた。が、プーチン大統領の頭の中は、ソ連崩壊によるNATО(北大西洋条約機構)の脅威、ウクライナのネオナチ化といった思い込みや被害妄想など独裁者ゆえの強迫観念に苛まれていたようだ。でも、免罪符にはならぬ。軍事侵攻から四カ月余。ロシア軍の苦戦が濃厚になっている。人工衛星やSNSなどを駆使したウクライナ側のハイブリット戦に翻弄され、前戦部隊は総崩れ。加えて西側諸国の経済制裁が効いてきて、真相を知り始めたロシア国民のプーチン離れも加速。失脚のⅩデーさえ囁かれ始めた。「おごる平家は久しからず」の警句通り、古今東西、民心を失った権力者の寿命は先が見えている。楽観は許されないが、このまま推移すれば、核戦争や第三次世界大戦への突入も杞憂に終わるかも。是非そうなって欲しいとヒロシマの地から願う。はからずも国際社会は多くの宿題を背負った。先ずは国連安保理の組織改革と機能の強化。同時に核兵器の完全廃棄の実現だ。そして「持続可能な地球」実現のための、恒久的な《平和回廊》の設定に繋げたい。たびかさふん ぎ  十 ふじんどうかいろうき  さ たあかつきさいなめんざいほんろうつなささやゆう人命尊重へ究極の選択その二百五人道回廊

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