シネマッド2022年7月
12/22

〔1968年=ユナイト配給/102分◆スティーブ・マックィーン主演〕彼女と華麗なデート三昧。それは恋の鞘当てのようであり、心理ゲームの攻防でもあった…。 結末は観てのお楽しみとして、冒頭のクレジットからマルチ画面の斬新なデザインで洒落てみせ、そのまま“手下”への指示から作戦決行への過程を効果的に表現し、後にもマルチ画面が大活躍。 マックィーンの格好良さに哀愁が加わり、続く秀作『ブリット』に繋がったように感じた。相手役のダナウェイは前年、『俺たちに明日はない』で注目され、この作品で色気たっぷりの好演をみせた。 ミシェル・ルグランの音楽にも注目して欲しい。アカデミー賞の主題歌賞に輝いた流麗な曲『風のささやき』を歌うのは、名作『マイ・フェア・レディ』などで知られるレックス・ハリスンの息子ノエルで、冒頭とグライダーのシーンで流れ、酔いしれた。傑作!The Thomas Crown Affair12 本欄No.52『砲艦サンパブロ』のスティーブ・マックィーン主演、続くNo.53『屋根の上のバイオリン弾き』のノーマン・ジュイソンが監督したクライム・サスペンスの傑作をご紹介しておこう。 主人公のトーマス・クラウンは不動産取引などで富を築いた36歳の実業家。裏の顔は、見知らぬ男たちを雇って電話で指示を出し、銀行強盗をやってのける頭脳派の大泥棒だ。大胆にも本社の向かいにある銀行から大金を盗ませて、金は自らスイスの銀行へ運び匿名で預金した。証拠を残さない完全犯罪にボストン警察のマロン刑事(ポール・バーク)は頭を抱える。銀行と契約する保険会社の調査員ビッキー(フェイ・ダナウェイ)も捜査に加わり、奇抜な手口を通し犯人像を推理した末、クラウンに目をつける。真正面から近づいたビッキーの猛攻撃にもクラウンは表情ひとつ変えず、逆に艶っぽいFile No.55『華麗なる賭け』

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