せいじてろ 十その二百七政治テロ安倍晋三元首相が、奈良市で参院選挙の応援演説中に凶弾に倒れ死亡するという『政治テロ』事件が起きた。犯人は元海上自衛隊員で、「旧統一教会信者の母が統一教会に財産を貢いだのは安倍元首相の影響だ」と思い込み、犯行に及んだものだ。『政治テロ』には変わりないが、そこには屈折した犯人の人生模様が見え隠れする。後から思えば、警察の警護はお粗末だった。奈良県警の本部長が反省点に挙げたように、街頭に立つ安倍元首相の後方は無防備だった。かつて要人取材の経験を持つ筆者からみても驚くような失態。同じ失敗を繰り返さぬよう改善策を講じたい。ただ、旧統一教会は晋三元首相の母方の祖父・岸信介元首相が肩入れしたという因縁がある。「六〇年安保」のころ「孫の晋三が僕の膝の上で〝安保反対!安保反対〟と叫ぶんだよね」と嘆いていたのを懐かしく思い出す。その晋三坊やが政治家になって凶弾に倒れるとは―。政治家一族の宿命を背負ったような生き方にあらためて弔意を表したい。9月27日に「国葬」が行われる予定だ。1967年の吉田茂元首相以来、戦後二例目となる。が、早くも野党や国民の一部から反対の声が上がっている。八年余と首相在位期間は長い。けれども、森友・加計学園、桜を見る会事件など功罪も半ばする。中曽根元首相の時のように自民党葬等にとどめたい。「政治家の評価は歴史に任せよ」というではないか。焦る必要はない。人生はさまざまだ。安倍元首相のように生まれて来た時から政治家になることを「予定され」「期待された」人生もあろう。また、凶行に及んだ犯人のように「殺人犯」で人生を終える運命にある者もいる。今回の凶弾事件に、そんな思いを深くするのは筆者一人だけだろうか。「自分は何者か?」「どんな宿命を背負って来たのか?」。目下、堂々巡りをしている。屈折した﹁凶行の動機﹂いんねんちょういひざ
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