〔1942年=MGM映画/125分◆マービン・ルロイ監督〕Random Harvest14File No.59 物語は11月11日から始まる―。1918年のこの日、第一次世界大戦で連合国が独軍を降伏させ、国中お祭り騒ぎになっていた時、英国中部の都市メイブリッジで一人の男(ロナルド・コールマン)が霧の中を放浪していた。彼は仏戦線で頭を負傷して記憶を失い、スミスという仮名でこの町の精神病院に収容されていたが、不安に駆られ逃げ出したのだ。捜索の手が迫る中、通りがかった旅回りの踊り子ポーラ(グリア・ガースン)が宿舎で匿ってくれ、二人は行きがかりからデボンの田舎町に逃げる。 小さな民家を借りて落ち着いた二人は愛し合うようになり結婚、男児に恵まれて幸せに暮らすうちスミスは新聞社に文才を認められ原稿料を得るように。リバプールの新聞社から声がかかって訪ねる途中の1920年11月14日、彼は交通事故で頭を打ち昔の記憶が蘇る。ただし、ポーラとの幸せな日々の記憶は消えてしまった…。本名チャールズ・レイナーとして故郷に戻った彼は、父親の遺言で広大な屋敷と事業を受け継ぐ。 会社は発展し多忙を極める彼の新しい秘書として、マーガレットと名乗るポーラが採用されたが、彼は全く気づかない。唯一デボンの家の鍵だけはポケットに入れたまま記憶を辿ろうとする。彼女は淡い期待を抱きながらも自分からは言い出さず、耐え忍んだ。 やがて、彼は実業界を代表して議員になり、優秀な秘書でもあるマーガレットに世間体だけの妻になってくれと申し込む…。 数多くの秀作小説を生み出したジェームズ・ヒルトンの代表作を名匠マービン・ルロイが映画化。時空を飛ばしても、簡潔な表現で見事に繋ぎ、多彩な伏線を終盤で一気に回収する見事さ!。これぞ「純愛映画」だ。泣ける!『心の旅路』
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