〔1969年=MGM配給/152分◆ハーバート・ロス監督〕14Goodbye, Mr. Chips 卒業式シーズンになると、わが青春の1頁にこの映画の名場面と音楽が重なり、蘇ってくる。学園ものであり、夫婦愛を謳いあげたミュージカルの傑作だ。 原作はジェームズ・ヒルトンで戦前に映画化され(1939年/サム・ウッド監督/主演=ロバート・ドーナット、グリア・ガースン)、アカデミー主演男優賞に輝いたが日本では未公開だった。 舞台はイングランド南部にある名門の寄宿学校。堅物ながら生徒思いの古典教師チッピング、通称チップス(ピーター・オトゥール)がミュージカル女優のキャサリン(ペトゥラ・クラーク)と知り合い夏休みの旅行先ポンペイで偶然に再会する。博識なうえ誠実な紳士チップスに彼女は猛アタック!。人気女優と堅物教師の電撃結婚に学園中は大騒ぎとなり、紆余曲折の末に夫婦とも皆に慕われ幸せな日々が続く。やがて第二次大戦が始まり独軍の空襲の中でも気高く平静に学園生活を送るが…という、チップスの半生を優しく描いた感動作。 物語はもちろん、音楽がいい。名優のオトゥールも人気ポップス歌手クラークも名言「歌は語れ、台詞は歌え」を見事なまでに実践した。オトゥールはアカデミーの主演男優賞に、音楽監督の大御所ジョン・ウィリアムスと作詞作曲のレスリー・ブリッカスも音楽賞にノミネートされた。 加えて『赤い風車』や『白鯨』『ナバロンの要塞』『屋根の上のバイオリン弾き』などの撮影監督オズワルド・モリス、『バリー・リンドン』や007シリーズなどの美術監督ケン・アダムスといった名手たちが流石の仕事を見せた。現代の日本では稀な存在になった理想的な“恩師”像を偲びながら、感涙と余韻に浸って欲しい。File No.63『チップス先生さようなら』
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