Le Passager de la Pluie〔1970年=仏/120分◆ルネ・クレマン監督/チャールズ・ブロンソン主演〕 雨が印象的な作品を…と記憶を手繰り寄せてみたら真っ先にこの作品を思い出した。なにせ古くは情緒満点『禁じられた遊び』(ʼ52)や文芸作『居酒屋』(ʼ56)、名作『太陽がいっぱい』(ʼ60)、大戦秘話『パリは燃えているか』(ʼ66)などで知られる名匠ルネ・クレマン監督と、推理小説の名手ジャン・セバスチャン・ジャプリゾのオリジナル脚本。面白くない訳がない。 フランス南部の海に面した町が舞台。雨の中、不気味な男が赤い鞄を持ってバスを降りた。それを目撃した女メリー(マルレーヌ・ジョベール)は夜、男に襲われる。パイロットの夫は出張中。彼女は地下室に潜んでいた男を散弾銃で殺し、死体を海へ投げ捨てる。 翌日、友人の結婚パーティ会場で彼女は不敵な笑みを浮かべる男ドブス(チャールズ・ブロンソン)から「なぜ殺した」と声をかけられ執拗に付きまとわれる。果たして12File No.66あの男の正体は?。消えた赤い鞄の中身は?。そしてドブスの狙いは…というサスペンス。 名作『荒野の七人』(ʼ60)や超大作『大脱走』(ʼ63)などで、脇役ながら活躍していたブロンソンがアラン・ドロンと競演した『さらば友よ』(ʼ68)に続き、本格主演作として男臭さを振りまき大ヒット。直後に男性用化粧品『マンダム』のCM(大林宣彦が演出)にも出て旋風を巻き起こした。高倉健や菅原文太もカッコいいが、若者は(筆者も)ブロンソンを真似たものだ。 同時にショートヘアにそばかす顔のジョベールもボーイッシュな魅力でヒロインを好演、若者たち(筆者を含む)はメロメロになり、複雑な謎解きとヒロインの過去を解きほぐす―という名目で何度も観に行った(広島ではピカデリー劇場で公開)。フランシス・レイの音楽も流麗で魅力的だ。『雨の訪問者』
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