※成田屋の当代(十三代目)市川團十郎/歌舞伎はもちろん舞台に大河ドラマ『武藏』にと大活躍だったが、 ▲広島での完成披露記者会見で思いを語った佐々部清監督(左)と市川海老蔵10〔2006年(平成18年)=松竹配給/121分◆佐々部清監督・市川海老蔵主演〕 もうすぐ終戦から78年―今では「戦後」という言葉も薄れ、次なる「戦前」になろうとしている危機感すら感じていない若者たちに是非観てもらいたい秀作をご紹介。 横山秀夫の同名小説を、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した名作『うなぎ』などの冨川元文と、名匠・山田洋次が脚色。 甲子園の優勝投手で明治大学の野球部に進んだものの肩を壊した並木浩二(市川海老蔵※)は、夢の“消える魔球”を追究しているが、やがて日米開戦―。次第に戦況は厳しくなり、遂に学徒動員の波が若者たちに襲いかかる。マラソンに青春を賭ける北(伊勢谷友介)も夢を諦め海軍に志願した。それに押されてか並木も応じて横須賀の海軍対潜学校へ。 佐藤校長(平泉成)はこう語る。「戦況悪化を打破すべく開発した秘密兵器は一撃必殺を期するもので危険を伴う。よって諸子の如きFile No.67 特別ワイド版元気溌剌、かつ攻撃的精神旺盛な者を必要としている」と大和魂に訴えて希望者を募り、並木も志願する。こうして並木少尉は山口の光基地へとやって来る。そこには中尉となった北もいた。 馬場大尉(永島敏行)が新兵器の特殊潜航艇「回天」の性能や難しい操縦方法、威力を説明する。要は一人乗りの“人間魚雷”で、弾頭にTNT炸薬を搭載。ハッチの開閉は外からだけで、スクリューは逆回転せず、酸素も燃料も片道分。一旦発進したら突き進むしかない特攻肉弾兵器なのだ。 束の間の休暇で父(三浦友和)や母(古手川祐子)、妹(尾高杏奈)、そして愛する美奈子(上野樹里)に別れを告げ、並木はいよいよ実戦の海に赴いた。伊号潜水艦に搭載された「回天」のうち、先ず一艇が敵輸送船に突撃した。続く北艇は故障で発進できず無念の出撃中止に。北は並木艇を譲って欲しいと『出口のない海』
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