その二百十八人口減少しょう(1953年)頃の数字に近い。さら《日本人七十五万人減、過去最大》《総人口十二年連続減少》―こんな新聞テレビ報道に驚き、不安を覚えた国民も多いのではないか。総務省の推計によると、わが国の総人口は五十年後には一億を割り、八千七百万人に。これは、終戦後の昭和28年に百年後には五千万人を割り、明治後期の水準に戻る見込み。そういえば、筆者が小6のとき担任の先生から「日本の人口が間もなく八千万人になります」と教わったことを思いだす。太平洋戦争で多くの犠牲者を出し、人口増が期待されていた時代のことだ。人口減少時代の不安は、なお増幅される。人口問題研究学者らの指摘をみると、①高齢者人口がピークに(三人に一人が65歳以上)②全国の自治体の半数が消滅③火葬場が不足④三戸に一戸が空き家に⑤輸血用の血液が極度に不足⑥学生減で国公立をはじめ多くの大学が閉鎖へ―など多方面に及ぶ。では、人口減少時代を生き抜く心構えはどうあるべきか。『未来を見る力―人口減少に負けない思考法』(PHP新書)著者の河合雅司・大正大客員教授は、先ず過去の「価値観」からの脱皮を挙げる。「これまでの発想や手法では全く通用しない時代に入ることを自覚すべきだ」と生活レベルの切り下げを示唆する。わが国で「少子高齢化」現象が顕著になったのは平成になってから。政策的にもっと早くから対応策が取れなかったのか、反省が残る。岸田内閣は「異次元の少子化対策」を掲げているが、成果が見えない。三年に及ぶ「コロナ禍」は、これまでの予防医学・公衆衛生の常識を超えていた。「そうした歴史的経験も生かしたい」と河合教授。昨年4月、当欄で山岳のブータン国民が「幸福度世界一」を自負していることを紹介した。神髄は「足ることを知る」生活信条にあった。そんな心構えも人口減少時代を生き抜く大きな支えとなるだろう。 し さしんずい 百年後﹁五千万人﹂割る た じんこうげん 八
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