迷走するマイナカードその二百十九ひも付け コンピューターで二つ以上のデータを相互に関連付けたり連結したりすることを《ひも付け》という。マイナンバーカードの普及問題で「時の言葉」となった。漢字で書けば「紐付け」。そう、「紐」とは三文小説に登場する、女性を食いものにする〝情夫〟のことも表し、もともと品のある言葉ではない。 鳴り物入りでスタートしたマイナンバーカード(以下マイナカード)制度だが、自治体の「ひも付け」時のトラブル続きで普及促進が暗礁に乗り上げている。行く行くは、健康保険証や運転免許証なども「ひも付け」した万能カードになるとの触れ込みだった。筆者もすぐに交付手続きを済ませた。が、紛失や盗難が怖くてタンスの奥に収めたまま。「宝の持ち腐れ」状態だ。 そんな折、自治体のマイナカードの交付ミスが多発、カード返納が相次いでいる。こともあろうに、担当大臣から「カードの名称を変更しようか」との無責任発言も。自業自得といえようか。というのも、政府のマイナカード導入の本音は「国民の税逃れのチェックにある」というのが専門家の見方。確かに多様な税逃れの防止には一定の効果があるかもしれないが、課題も多い。参考までに、ドイツの国会では「人権侵害など民主社会のシステムとしてふさわしくない」との理由からマイナカードの導入を見送っている。 問題は《ひも付け》の内容にあるだろう。わが国の場合も「健康保険証や運転免許証は現行制度でよい」とする意見も多い。利便性と安全性の兼ね合いについて再検討が必要だし、《ひも付け》の内容も国民の要望をよく聞くべきだ。 古今東西、住民に「年貢」(または税金)を滞りなく収めさせるにはどうすべきか、お役人は時代に即して知恵を絞ってきたようだ。が、今本のお役人たちが、マイナカードの導入を巡り迷走している姿には、失望の念を禁じ得ない。ひもさんもんこわごうとくになとどこおねんつぐじじ八21世紀を担う科学技術・民主国家日
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