7「お前は誰だ?」と男を追い出す始末。困り果てた浮浪者は、娘のために金を稼ごうと、道路掃除や賭けのボクシングに挑むが失敗の連続。そんな時、再び酔った富豪と偶然に出会い千㌦もらった時に運悪く強盗に襲われ、男も一味と勘違いされ警官に追われる。 かろうじて金を娘に渡したが、男は無実の罪で捕えられ刑務所に入れられる。時は過ぎ、出所した浮浪者が歩いていると、懐かしい娘が居た。あの大金で眼を手術、さらに花屋を営むまでになって、幸せそうに働いているのだ。彼はじっと見詰めるだけ。娘は一輪の花と施しの小銭を渡してやろうと手を伸ばすが、男は滅相もないと逃げようとする。彼の手を取って花と小銭を渡した時、娘はあの手の感触を思い出し「あなたなの!?」と笑顔をみせ、彼は頷くだけ…という、心に灯がともる物語。 子供時代に極貧生活で苦労したチャップリンのさまざまな思いが込められている代表作だ。随所に計算し尽くされた“動き”で笑いを誘い、時にハラハラさせて魅せる演出は見事の一語。オープニングでは「A COMEDY ROMANCE IN PANTOMIME」と表記しており、これは現代のコメディアン諸君も「お笑い芸」の手本として学んで欲しいところだが…。 ちなみに製作を「ユナイト映画」と記しているが、その正式名称は「ユナイテッド・アーチスツ」、つまり「芸術家組合」という意味。チャップリンをはじめダグラス・フェアバンクス、名匠グリフィス監督らが、大手映画会社の制約を嫌い、自分たちの創りたい作品を撮ろうと1919年に設立した独立系プロダクションの走りである。
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