『街の灯』6City Lights〔1931年=ユナイト映画/87分◆チャールズ・チャップリン監督・主演〕 新年の第一弾は心温まる物語に浸っていただこうと選んだ秀作。チャップリン映画の中でも最高に好きな作品なので。 オープニングは街の中央広場で「平和と繁栄」の記念碑除幕式。サイレント映画だが、伴奏のほか例えばお偉方のスピーチにはガアガアピーピーの擬音をアテているのがチャップリン独特の大皮肉。さて除幕すると彫像の膝には一人の浮浪者(チャップリン)が寝ていたので大騒ぎ。国歌が流れれば来賓一堂は直立不動、終わったら早く降りろとわめくのも滑稽だ。すったもんだの末に像から降りてきた男は雑踏に逃げていった。 彼は渋滞の車列を縫って歩き、横着して高級車の右ドアを開けて通り抜け左ドアをバタンと閉めて出たのが悲喜劇の始まり―。目の前に居たのは盲目の美しい花売り娘(バージニア・チェリル)だから男はメロメロ。一方の彼女はドアの音を聞いた後だから、てっきり彼を金持ちの紳士だと思い込む。花を一輪買ってなけなしの小銭を渡した、その手を彼女は覚えた。 夜、男は一人の富豪(ハリー・マイヤーズ)と知り合う。なにせ酔っ払うと自殺願望に陥る富豪は浮浪者に助けられ、邸宅に招いて大盤振る舞い。男は10㌦もらって花を買いに走り、借りた高級車で彼女を自宅まで送る。ところが、富豪は酔いが醒めると記憶が消えFile No.73
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