2024年2月
9/14

かめだけもとうら 雪景色、ことに吹雪を見る時はこの作品を思い出す。松本清張の同名推理小説を橋本忍・山田洋次の脚色、名匠・野村芳太郎監督のメガホンで映画化した感動作。 6月、国鉄蒲田操車場で初老の男が殺された。所持品はなく身元不明。警視庁の今西警部補(丹波哲郎)と所轄・西蒲田署の吉村刑事(森田健作)らが聞き込みを続けるうち、近くのトリスバーで前夜、被害者と思われる老人と若い男が話し込んでいて、途中ズーズー弁で「カメダ」がどうだとか話していたと言う。東北各県に亀田姓の行方不明者を照会したが該当者はなく、次に秋田の地名「羽後亀田」と見て今西と吉村は現地へ赴くがここでも手掛かりはなく、8月になって捜査本部は解散―。 そんな時、中央線の車窓から紙吹雪を撒く女がいたという記事が6File No.73〔1974年(昭和49年)=松竹・橋本プロ提携作品/143分◆野村芳太郎監督〕目に止まり、今西と吉村は犯人が返り血を浴びた白いシャツを切り捨てたのではと踏んだ。その女が高級クラブのホステス高木理恵子(島田陽子)と判り訪ねたものの、彼女は関係を否定した直後に姿を消した…。同じ頃に岡山の東部、美作・江見町から被害者の息子が現れ、殺されたのは三木謙一(緒形拳)だと判明する。が、「カメダ」との接点は見当たらない。 今西は国語学者からズーズー弁は東北に限らず《方言波紋説》で出雲地方の訛りにも残っていて、語尾が弱く発音されるのも特徴と聞き、地図で「亀嵩」を見つける。かつて謙一は亀嵩の駐在所に赴任中、放浪する父子を助けたことがあった。父・本浦千代吉(加藤嘉)はハンセン氏病を患ったことから石川県の寒村を追われ、幼い息子の秀夫(春日和秀)と巡礼の旅に。『砂の器』

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る