え き ひ7されるからと、長年の差し入れに礼を述べ、辞世の句「暗闇の彼方に光る一点を今駅舎の灯と信じつつ行く」を添えて…。 英次は正月に帰郷するため増毛駅に降り立つ。風待食堂では今もすず子が元気に働いていた。船は吹雪で欠航。英次は宿をとり近くの赤提灯「桐子」へ足を運んだ。そこは桐子(倍賞千恵子)が一人で切り盛りする居酒屋で、晦日だというのに客はいない。テレビでは小林幸子の「おもいで酒」に続いて八代亜紀の「舟唄」が流れる。この歌、好きなの…と呟く桐子に英次は魅かれた。飲み明かし、大晦日も一緒に過ごし、結ばれる。夜は和装の桐子とカウンター席に並び紅白歌合戦を見ながら“大トリ”の「舟唄」を口ずさむ…。 元日の午後、帰省した英次だが年老いた母(北林谷栄)のためにも故郷で働こうと決意。退職願を懐に戻った増毛の港では桐子が笑顔で出迎えた。英次は束の間、彼女との暮らしを考えるが、その後に哀しい運命が待っていた…。 この物語は高倉健の誕生日祝いで倉本聰が贈った脚本『駅舎』を元に、田中寿一プロデューサーと降旗康男監督、そして倍賞千恵子ら理想的な女優陣を集めて撮った力作。高倉が『八甲田山』での撮影の腕を買って木村大作を降旗監督に推薦し、以降この三人で秀作を次々に撮っていくことに。 日本アカデミー賞では作品賞、脚本賞、主演男優賞などを受賞。主演女優や助演男女優、撮影などにもノミネートされた。 最終盤でも「舟唄」が流れ、桐子の啜り泣きが微かに被る…見事なエンディングに胸が締め付けられ泣けるという大傑作である。
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