2024年5月
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The Desperate HoursFile No.77 前号に続いてのワイラー監督作ながら、前号の『ベン・ハー』とは真逆のギャングものサスペンスの傑作を紹介しておこう。とは言いながら、白状すると小生がこれを三番館で観た時、ワイラー監督や主演ハンフリー・ボガートの名も知らなかった。昭和43年12月19日の木曜、学校帰りに若草町の寿座へ行った。当時は確か三本立てで150円ほど。目当ては好きなスパイもの『さらばベルリンの灯』で、併映の三流西部劇は既に始まっていて後半だけ観た。本命を見終え最後に映し出されたのが、なんと白黒の画面。後で知ったのだが、最新鋭高画質のビスタビジョンで初めてのモノクロ作品。緊迫感を醸すための仕掛けだったとか。 アメリカ中西部のインディアナポリス郊外の住宅街。中流家庭のヒリヤード家にグレン(ボガート)6と弟ハル、うすのろのサムという三人の脱獄囚が押し入ってくる。あるじ主のダン(フレデリック・マーチ)と娘シンディは仕事に、幼い息子ラルフは学校へ行き、家には妻のエリナー(マーサ・スコット)だけが居た。グレンは情婦が高飛びの金を持って来るまで隠れるだけだとエリナーをなだめるが、サムはいささか傍若無人だ。 夕方になってダンやシンディ、ラルフが次々に帰宅、一家4人は人質として眠れぬ夜を過ごす…。その頃、街では脱獄囚を追跡してバード警部(アーサー・ケネディ)の指揮下、捜査網が広げられてはいたが一向に手掛かりは掴めず、夜が明ける。グレンは一家全員に何事もないよう振る舞えと強要、エリナーに拳銃を突きつける。 やがて逃走に使った車が一家の車庫にあるのを廃品回収業の男が〔1955年=パラマウント映画/112分◆ウィリアム・ワイラー監督〕『必死の逃亡者』

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