三 「そのほか多くの名所旧跡、遺跡、名産品などが散りばめられている。が、決してPR映画ではなく、題名も単なるダジャレではない。劇中、課外授業で高校生たちを歴史的価値のある地を連れて歩きながら教師の尾崎(甲本雅裕)が「お前たちは故郷の本当の良さを分かっとうかや?」と問いかける。若者たちは「うん、これって何?」と再認識するというのが作品の軸になっている。さらに〝神代の昔〟から延々と繰り返された恋愛があるからこそ伝統も技術も〝故郷の宝〟も連綿と受け継がれてきたわけで、「つまりこの映画は《命の愛おしさ》を織り込んでの人生讃歌なんです」と錦織監督はニッコリ笑ったのが印象に残っている。試写の感動を焼き付け、さっそく「ロケ地めぐり読者ツアー」を募集、当時の現地プロデューサー・宇都宮睦登さんにご協力いただき、コース設定と食事の手配、そしてガイドもお願いした。読者のほかにHOME「Jステーション」の人気コーナー「発車オーライ」の取材スタッフも加わり、楽しい旅が始まった。まずは「須我神社」で恋愛成就を祈り、隣接する「神楽の宿」で名物焼きさば寿司の昼食。続いて劇中で〝願い橋〟として登場する斐伊川の沈下橋で、主人公たちを真似て目をつむったまま渡ることに挑戦した。もちろん「菅谷たたら」なども見学した。劇中「ヤマタのおちち」として登場する「木次乳業」パスチャライズ牛乳も飲み、「木次酒造」の純米吟醸酒「太平洋」の「うん、何?」ラベルも土産に…と楽しいツアーだった。この旅を通じ、錦織監督の故郷愛が身体と心に染み込んだように思う。
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