ドイツ人ハインリッヒ(ハーディー・クリューガー)は機体を隅々まで調べながら何やらメモしている。問い質すと、破損の少ない左側の翼とエンジンと胴体に右側の翼を付けて補強すれば立派な単発機が出来る―と言うのだ。途方もない計画だが、今となっては唯一無二の脱出方法だと納得し、フランク以下の7人は力を合わせて作業に励む…という物語。 経験したことはないが、いわば「遭難者あるある」の葛藤、衝突、勇気と友情のドラマで、男同士の個性のぶつかり合いが面白い!。2004年にリメイク版が公開されたが、予告編では墜落の場面をCGで派手に描写。舞台は中国市場を意識してかゴビ砂漠に変更した。操縦士役のデニス・クエイド以外はさほど有名とは言えず、現代の世相を反映して女性や黒人も登場させたり、あのドイツ人設計士を奇人変人のように描いたり…と、人間ドラマの見どころは皆無に。嗚呼ハリウッドも企画力が落ちたのか、世界市場で“万人受け”する娯楽作しか作れなくなったということか。失速・墜落しても救助隊は来てくれないよ。救ってくれるのは『ゴジラ』くらい? これはエルストン・トレバーの小説を映画化したものだが、その脚色力も、配役の妙も、何もかも製作者でもあるアルドリッチ監督のセンスが感じられる。そこには当時のハリウッドのエンタメ精神とオリジナリティ、“活動屋魂”に裏打ちされた真の娯楽性があると思うのだが、今の若者たちにどう映るのだろう。この欄に紹介してきた作品の数々は、一見地味かも知れないが、食わず嫌いをせずに味わって欲しい。そんな一本だ。7
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