2024年9月
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〔1949年(昭和24年)=東宝配給/121分◆黒沢明監督・菊島隆三脚本〕 実弾が7発も入ったまま、犯罪に使われては厄介だ。上司の温情で村上は処分が決まるまで犯人を捜して歩くことになる。スリ係の老刑事・市川(河村黎吉)が的確なアドバイスをしてくれたお陰で、車内で村上の隣にすり寄っていた安い香水の匂いが強い女が常習犯のお銀(岸輝子)と分かり、執拗に食い下がって“貸しピストル屋”の情報を聞き出す。村上は復員兵姿で街を歩き廻ってアジトを捜す。 遂に組織の“窓口”の女を捕えたが、親玉には逃げられてしまう。村上の若さゆえの拙速な行動から取り逃がしたのだ。そこで淀橋署のベテラン刑事・佐藤(志村喬)の応援も得ることになり、ようやく親玉の本多(山本礼三郎)を捕えるが、村上の拳銃は復員兵あがりの遊佐(木村功)の手にあり、それを使った強盗事件が起こった―。 映画『TWO IN HIROSHIMA 広島の二人』の製作が動き出したが、そのオリジナル脚本を書いたのが名シナリオライター菊島隆三だ。そのデビュー作を再確認。 菊島は大正3年、山梨県生まれ。空襲で家を失い、唯一残った蔵を売って、好きな映画か演劇で身を立てようと上京、本名の「隆蔵」から「隆三」に改名したという。東宝撮影所脚本部で修業し、独立直後、名匠・黒沢明に認められての初作品がこの『野良犬』だ。 暑い夏の日、射撃訓練を終えた村上刑事(三船敏郎)は、不用意にコルト自動拳銃を背広のポケットに入れてバスに乗った。車内は汗と厚化粧の匂いで気分が悪くなるほど。降りる時、ふとポケットに手をやると拳銃がない!。スリとおぼしき男が走って逃げ、村上は必死で追ったが見失った―。6File No.81『野良犬』

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