いさかはかなめぢからFile No.82 秋は、もの悲しく、過ぎ去った恋を思い出す季節―。筆者の世代が夢中になった悲恋映画といえばこの作品。なにしろ美しい。 言わずと知れたシェイクスピアの名戯曲だが、モンタギュー家とキャピュレット家との諍いが続く中で起こった悲恋の物語であると同時に、「若さゆえ」の拙速さからもたらされた悲劇でもある。その意味では演者の年齢もポイントとなりそう。初の映画化(1935)ではロミオ役のレスリー・ハワードが42歳、ジュリエット役のノーマ・▲1954年版(英作品)のプレスシート6〔1968年=英伊・パラマウント配給/138分◆フランコ・ゼフィレッリ監督〕Romeo and Julietシアラーが35歳ごろだ。二度目の1954年版はローレンス・ハーベイ26歳、スーザン・シェルトン20歳と少々若返った。三本目の伊作品は詳細不明だが20代と思われる。だが、このゼフィレッリ監督作はレナード・ホワイティング16歳、オリビア・ハッセー15歳と原作に最も近い年齢の新人を大抜擢して「若さゆえ」の甘酸っぱさと高揚と儚さを見事に映像化した傑作。ちなみに1996年版は、レオナルド・ディカプリオが22歳、クレア・デインズ17歳ごろの作品。 もうひとつ、主人公が二人とも美男美女だったこと。レナードは現代のイケメン・タレントたちに引けを取らない端正な顔立ちと、ちょっとばかり野獣のような強い目力で世の女の子たちを魅了したものだ。そしてオリビアの美しい瞳とキュートな顔立ちに男たちは『ロミオとジュリエット』
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