瀬戸内海汽船の新造クルーズフェリー「シーパセオ」が完成、報道陣や旅行関係者、マリンガイドなどにお披露目された。これは、来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて外国人観光客が増加する中、ユニバーサルデザインを取り入れた「新時代の船」を目指して建造したもの。
コンセプトは「PARK on the SETONAIKAI」―。「フェリーを単なる海上交通手段としてでなく、瀬戸内海を“公園”として楽しみながら移動してもらいたいという思いを込めました。お好みの場所で思い思いの時間を過ごしていただけるよう多彩な趣向を凝らしたスペースを設けています」と仁田一郎社長は話す。
船名の「パセオ」はスペイン語で「遊歩道」の意。このフェリーを「瀬戸内海の散歩道」として楽しめるよう設計されている。
船内には、エレベーターを備えるなどバリアフリー環境を整えているほか多目的トイレや授乳室も完備。もちろん船旅を楽しむさまざまなスタイルに適応するスペースをちりばめている。例えば靴を脱いで寛げる「小上がり」「ごろ寝」そして「おざせき」エリア、眺望を楽しめる「パノラマカウンター」や「パノラマソファ」「リラックスシート」、そして売店の前には「リフレッシュ・ラウンジ」席も並んでいる。
また、後部デッキのテラス席の後方には吹き抜けの「そよ風のパティオ」があり、3階に上がると、広い円形の展望スペースと船上の東屋「しお風のガゼボ」6基、人工芝の「しお風のグリーンテラス」が配してあり、瀬戸内の多島美を満喫できるスペースに斬新なデザインを施している。
売店もグレードアップ。従来のフェリーで一番人気のうどんは、「シーパセオ」では讃岐うどんを使っているほか、広島・愛媛の名物を使った軽食やスナック類、お洒落なオリジナルのカフェメニューなどが充実している。また「シーパセオ」のオリジナルグッズとして今治タオルや福山デニムを使った品々や広島檸檬ケーキ、缶バッジが並べられている。
運航情報モニターのほかフリーWi-Fiやモバイル用電源なども完備。総トン数は980トンで、旅客定員は300名だが、陸上の災害時などに即時対応して臨時に440名収容できるよう設計されている。車両積載は、乗用車換算で35台分。ちなみに、この豪華フェリーの乗船料は従来のフェリーと同額なのが嬉しい。
8月1日から広島・呉―松山航路に就航し、1日に2、3往復するほか、この新型フェリーを使ったバスツアーなども企画されている。仁田社長は、「老若男女、幅広い層のお客さまに船旅を楽しんでいただけるよう、例えば、船長やマリンガイドさんたちに参加してもらって船内で体験型イベントを行うとか、松山・道後温泉の道後舘などと連携して新しいプランをご提案していきたい。また、外国からの観光客に対応するため港の案内所に英語のできるスタッフも常駐させました。さらに、定期航路のほかにも停泊している夜間の活用方法も考えていきたい」と意欲的。
来年にはさらに1隻が加わる予定で、共同運航している石崎汽船でも独自のコンセプトによる新造船2隻を同時期に導入する計画があり、来年の夏にはこの航路を新造4隻が出そろうことになる。
※℡082・255−3342 HP http://setonaikaikisen.co.jp