元祖“便利屋”の実話を映画化した感動作『ふうけもん』の広島特別上映会が11月10日に中区中島町の広島国際会議場フェニックスホールで開かれ、“釣りバカ日誌”シリーズなどで知られる栗山富夫監督が舞台挨拶に立った。
この作品は、裏社会で生きてきた“ふうけもん”(佐賀弁で「バカ」の意)の主人公が宣教師に出会って心機一転、第二の人生はひたすら人のために—と便利屋を始め、ありとあらゆる仕事を引き受ける姿を通して現代社会を浮き彫りにするもの。出演は中村雅俊、浅野ゆう子、河相我聞、垣内彩未、哀川翔、中村玉緒、笹野高史、藤村俊二、竹中直人、本田博太郎ら。
観客を前に栗山監督は、個人レベルで映画を作ったり見たりできる時代だが、「大きなホール、大きな銀幕、ちゃんとした音響で見ていただくのが映画の本道。最近、体調を崩して、あわや僕の遺作になるところだったけど、笑いと涙の物語を楽しんで欲しい」と話した。
助監督として大庭秀雄、野村芳太郎、五所平之助、山田洋次ら多くの名匠の下で腕を磨いてきた栗山監督だけに、この作品でも“松竹大船”の香りを漂わせている。「大船の作品は落語と同じ。洒落た笑いと涙があって、人間のいいところを掬いとっていこうという姿勢がずっとある」と言う。この作品ではキャスティングも秀逸。ことに脇を固める中村玉緒、藤村俊二、本田博太郎、笹野高史らベテラン陣は「カメラの位置とかを見て、どう動けばいいか、どう写されているかが分かっている人たち」だと絶賛する。「だからキャメラや照明、編集にも気をつかいました。これらのスタッフも職人技を見せてくれましたよ」と満足げ。
ちなみにこの作品は全国の200人近い発起人の後押しで製作をスタートしたが、東日本大震災の影響もあって資金が足りなくなり、劇場公開が流れた。そこで栗山監督が自ら脚を運んで全国縦断上映会を展開しており、広島は28県目。12月に入ってからは大分、福岡、熊本、宮崎、鹿児島、長崎、沖縄を回り、来年1月には東京・有楽町の「よみうりホール」で全国縦断を締めくくる。「その後もホールや劇場で上映できるよう、口コミで拡げてほしい」と栗山監督は熱く語った。